ヒグマの危険性について【専門家執筆】

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目次

ヒグマの危険性はどのくらい?遭遇した場合に危険から逃れるための対処法とは

ヒグマは、日本における最大の陸生動物です。

決して好戦的な動物ではありません。
大型の動物を捕獲することは少なく、主に木の実や草木の芽などを食べて生活しています。

しかし、非常に体が大きく、力も強いため、もし、攻撃された場合には、大けがや死亡につながる可能性があり、大変危険です。
餌に対する執着心の強さなど特有の習性を持っており、思わぬ行動が攻撃のリスクを高める可能性もあります。

そこでこの記事では、ヒグマの危険性や、危険にあった時の対処法、危険を防ぐための対策などを紹介します。

 

この記事を執筆した専門家

tk_tanaka【プロフェッショナル】

生物系大学院卒業後、自然環境系の建設コンサルタントに従事。
地理情報、自然環境や生物の生態等を専門とするほか、環境アセスメント図書作成の経験も有する生物環境分野の専門家。

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ヒグマの基本情報

ヒグマは大型の哺乳類で、日本最大の陸生動物です。
日本には2種類のクマが生息していますが、北海道に生息しているのがヒグマです。

全身の色は、主に褐色から黒色です。
しかし、個体による違いが結構ある動物で、比較的明るい色の個体や真っ黒の個体などが確認されています。

本州以南に生息するツキノワグマに比べて体はかなり大きく、オスの個体は体長2.0~2.3mにもなります。
ひとまわり小さいメスの個体でも、1.6~1.8mとツキノワグマよりも大型です。
体重は200kgを超えることも多く、520kgという非常に大きなオスの個体が捕獲された記録もあります。

体は大きいですが、運動能力は高く、時速50~60km程度で走ることができるそうです。
さらに、泳ぎもうまく、海や湖などを泳ぐヒグマが北海道の各地で確認されています。

獰猛な肉食動物の印象を持っている方も多いかもしれませんが、実際には植物食傾向が強い雑食性です。
ドングリなどの木の実、果実、木などの芽などを主に食べているようです。
肉食をする場合でも、積極的に他の哺乳類を捕まえるのではなく、昆虫類、魚類、動物の死骸などを食べることが多いようです。

また、シカなどの大型の哺乳類も餌として利用することもありますが、生きた個体を襲って食べるような捕食事例は少なく、死亡した個体や、越冬後の衰弱個体などを捕食することが多いようです。

このように、ヒグマは比較的植物食が多く、肉食をする場合も小型の生物や死んだ個体であることが多い動物です。

札幌市
ヒグマの生態・習性 ヒグマの生態や習性について説明しています。

しかし、ヒグマには、味を気に入った獲物は、強い執着心を持ち、繰り返し捕食する傾向があります。
過去には、人間を捕食して味を覚えた結果、同じヒグマが繰り返し人間を襲い続けた事件も起こっています。

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遭遇する地域や環境

ヒグマは、北半球に広く生息していて、具体的にはユーラシア大陸、北アメリカ大陸に分布します。
日本国内では、北海道のほぼ全域が生息地域です。

主な生息環境は森林です。
しかし、木が少ない野原のような環境にも出没することがあります。

ヒグマの行動範囲はとても広く、特にオスは、相当な広さを移動しています。
調査によると、1年間で数10キロ四方の面積を移動していた個体が普通に見られたようです。

この広大な行動圏の中に、人間の生活圏が含まれている場合も多いです。
基本的にヒグマは人間を避けて行動する動物ですが、人間の生活圏がヒグマの行動圏に含まれている場合には、都市部であっても不意にヒグマに遭遇する可能性があります。

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遭遇する時期や時間帯

ヒグマの主な活動時間帯は、早朝、夕暮れ、夜間です。
このように、日中の明るい時間帯にはあまり活発に活動しない傾向がありますが、夜行性ではありません。
そのため、日中に活動する場合もあります。

また、ヒグマは冬眠する習性があります。
冬眠するクマは、秋の間に餌をたくさん食べて、その栄養で冬を越します。
そのため、冬眠に向けて食いだめをする時期である9月~10月には、特にヒグマの行動が活発になります。
さらに、冬眠から覚めた直後も、多くの食事を必要とするため、ヒグマの行動が活発になります。
冬眠から覚める時期は、地域や年によって変動しますが、3月~5月頃です。
実際に、ヒグマに襲われる被害の多くは、春季と秋季に起こっています。

このように、ヒグマが野生環境下で生息している地域では、春から秋の間の深夜以外の時間帯に遭遇する可能性があります。
特に、春季と秋季の、日の出や日没前後の時間帯に活発に行動します。

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ヒグマの危険性

ヒグマの危険性は「噛まれること」や「引っかかれること」です。

基本的に気性は落ち着いており、どちらかというと臆病な性格です。
ヒグマが人間を見つけたとしてみても積極的に攻撃を仕掛けてくることは少なく、クマの方から逃げていく可能性が高いです。

しかし、不意に人と鉢合わせするなどして、驚いたり興奮した場合には攻撃してくる場合があります。
一旦、攻撃状態になると、大きな力で噛みついたり、引っかいてくるため、大けがをしたり、場合によっては命を失う可能性もあります。

実際に、ヒグマによる死亡事故は数年に一度発生しています。
クマによる人身被害の件数は生息地域が多いツキノワグマの方が多いですが、被害人数に対する死亡者人数の割合は、ヒグマの方が圧倒的に高いです。

すでに説明した通り、ヒグマは大型の動物を襲って捕食する性質は強くありません。
しかし、攻撃能力が非常に高いため、実際に攻撃を受けると、死亡に至る可能性がとても高い危険な動物です。

 

遭遇したときの対処法

上で説明した通り、ヒグマの危険性は噛まれたり引っかかれることです。
体が大きく力も強いため、実際にそのような被害を受けた場合には、大けがを負ったり、命を落とす可能性があります。

繰り返しになりますが、ヒグマは臆病な性格で、人を捕食目的で攻撃してくる可能性は低いです。
しかし、偶然、人間と鉢合わせしてしまった場合等には、驚いて攻撃してくるケースが多いようです。

突然、ヒグマと鉢合わせすると、冷静さを失い、パニック状態になるかもしれません。
しかし、とにかく慌てず落ち着くことが大切です。

焦って大声を出したり走って逃げたりすると、クマを刺激してより危険になります。
ここでは、ヒグマに遭遇してしまった場合に、安全に切り抜けるためにしてはいけないことや、しておくべきことを紹介します。

①距離が離れている場合(100m程度以上)

こちらに気付いていない場合は、ヒグマを見ながらそっとその場を離れます。
こちらに気付いて近づいてきている場合は、倒木などの上に立ち大きく腕を振るなどして人間であることを知らせます。
人間だとわかると離れていく可能性が高いです。

②近い距離で遭遇した場合(20m~50m程度)

ゆっくり大きく腕を振り、落ち着いて声をかけます。
クマとの間に木などの障害物が入るようにしながら、静かに離れます。
ヒグマがこちらを無視している場合は、目を離さずにそっとその場を離れます。
急な動きはヒグマを興奮させる原因となるため、落ち着くことが大切です。
ただし、じっとして動かないのも敵だと判断させる場合があります。

③非常に近い距離で遭遇した場合(20m以内)

基本的に、上記と同じように、ゆっくり大きく腕を振り、声をかけしながら、後ずさりします。
ヒグマとの間に、障害物を挟むことも大切です。
また、より近づいてきたときのために熊スプレーの用意をしておきます。
決して走って逃げないようにしましょう。
ヒグマも走って追いかけてくる可能性があります。
走るスピードでは人間はクマに勝てません。

④突進してきた場合

突進してきても、直ぐには直接的な攻撃をしてこないことが多いです。
「突進途中で立ち止まり、後退する」という行動を数回繰り返すことが多いです。
この段階では、上で書いたように後ろを向くことなくゆっくり後退しましょう。
突進が止まらず近づいてくるときは3~5mまで来た時点で熊スプレーをヒグマの顔面に向けて噴射します。

全量を一気に噴射しましょう。
もし、熊スプレーが無い場合、あっても聞かなかったときは、防御姿勢を取ります。
防御姿勢とは、首の後ろに強く両手を組み、両足を抱え込むように体を丸め、首を胸の方にまげて腹部を守る姿勢です。
攻撃が収まり、クマが離れていくまでその姿勢を保ち、動いてはいけません。
もし、転がされた場合でも、すぐに元の姿勢に戻るようにします。

実際に攻撃を受けた場合には、大けがをしている可能性が高いです。
出血の状況によっては止血の措置をとり、急いで病院に向かいましょう。

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遭遇を防ぐための対策

ヒグマの危険を防ぐための最も効果的な対策は「遭遇を避けること」です。

以下のような対策があります。

①声や音で知らせる

話しながら歩いたり、鈴などを持ち物に付けて、歩くたびに音が出るようにします。
登山用品店などに売っている「クマ鈴」というグッズをバッグなどに付けておくと、歩くたびに音を鳴らすことができます。
他にも、ラジオをつけておくといった方法も効果的です。

②出会う確率が高い時間帯を避けて行動する

ヒグマが活発に行動している時間帯ほど、偶然出会う確率は高まります。
そのため、そのような時間帯、具体的には、早朝や夕暮れ、夜間の時間帯を避けることが有効です。

③痕跡をみつけたらすぐに引き返す

クマが近くにいる痕跡に注意して、見つけたらすぐに引き返します。
動物の死骸の近くにはヒグマがいる可能性があります。
シカなどの死体がある場所には近づかないようにする必要があります。
死体は見つからなくても、腐敗臭などを感じた場合でもそちらには近づいてはいけません。
他にも、子熊がいたら周囲に必ず親がいます。
近づいて観察したりは絶対にせずに、ゆっくりと離れましょう。
また、ヒグマの出没情報を調べて、出没している場所には近づかないなどの対策もできます。

④ヒグマが驚くことをしない

クマを驚かせると、突発的な行動を引き起こす可能性があります。
犬を連れて森へ入ったり、爆竹をならすなど非常に大きな音を立てることはやめましょう。

繰り返しになりますが、ヒグマは決して好戦的な動物ではありません。
人間がクマを驚かせたり、興奮させることが無ければ、クマの方から逃げていく可能性が高いです。
クマに攻撃される場合には、何かしらの理由で、人間がクマを威嚇してしまっている可能性が高いです。
もしくは、興味を引くような行動をとってしまっている可能性もあります。

ここで説明した対策を、落ち着いて実行することで、クマに遭遇する可能性を小さくすることができます。

 

まとめ

本記事では、ヒグマの生態や危険性などをまとめました。
まとめると以下のような内容を説明いたしました。

– 国内の陸生哺乳類としては最大の大きさを持つ
– 運動能力が高く、森林内でも時速50km以上で走ることができる
– 力が強く、鋭い爪と大きな歯を持つため攻撃されると非常に危険
– 好戦的な性格ではないので、落ち着いて行動すると危険性を小さくできる

主に植物を食べており、決して攻撃的な動物ではありません。
しかし、驚いたり興奮すると人間を攻撃する場合があります。
力は強く、鋭い牙や爪を持っており、実際に攻撃されると非常に危険です。
ヒグマに遭遇しないことが、危険性を減らすための最も有効な対策です。

万が一、ヒグマに攻撃された場合の対処法は「背を向けずに逃げること」です。
そして、一定以上近づかれた場合には、熊スプレーなどで攻撃しましょう。

 

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