猛毒クラゲ「カツオノエボシ」の危険性【専門家執筆】

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目次

「猛毒クラゲ」として知られるカツオノエボシの危険性は?刺された場合の対処法について

カツオノエボシは、海面を漂っているヒドロ虫という種類(クダクラゲ目)の生物です。
クラゲのような見た目をしていますが、いわゆる「クラゲ」とは異なります。

日本では、太平洋側の海で多く見られ、岸に打ち上げられた個体を目にする機会も多いです。
青みがかった10cm程度の浮き袋と、その下に数十メートルに達するほどの長い触手を持っているのが特徴です。

この触手の表面には、小さな毒針を持つ細胞が並んでおり、直接触れると強い電気ショックのような激痛が走ります。

そこでこの記事では、カツオノエボシについて、その危険性や、危険にあった時の対処法、危険を防ぐための対策などを紹介します。

 

この記事を執筆した専門家

tk_tanaka【プロフェッショナル】

生物系大学院卒業後、自然環境系の建設コンサルタントに従事。
地理情報、自然環境や生物の生態等を専門とするほか、環境アセスメント図書作成の経験も有する生物環境分野の専門家。

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カツオノエボシの基本情報

カツオノエボシは、海に浮かんで生活しているクラゲのような生物です。

10cm程度で一部が紫がかった透明な見た目の浮き袋が特徴的です。
浮き袋の上部には出っ張りがあり、これが帆のように風を受けることができるようになっています。
なお、「カツオノエボシ」という名前は、太平洋岸でカツオが到来する時期に漂流してくることと、浮き袋の見た目が烏帽子(えぼし)に似ていることによります。

見た目はほとんどクラゲのように感じるかもしれませんが、いわゆる「クラゲ」ではなく、「ヒドロ虫」というグループの生物です。
一つの個体に見えるカツオノエボシですが、厳密にはヒドロ虫という小さな生物の群体(多数の個体がくっついている状態)です。
成長過程で、1つのヒドロ虫の幼体がどんどん増殖し、浮き袋や触手の一部に変化していきます。
カツオノエボシを、じっくり見る機会があれば、クラゲとは雰囲気が違う独特の外見であることがわかります。

カツオノエボシに遊泳力はほとんどなく、普段は海面を漂流しています。
しかし、強い南風が吹いた場合などには、海岸近くまで運ばれてきたり、場合によっては打ち上げられることもあります。
打ち上げられたカツオノエボシは、透明で紫がかった見た目で、プラスチックのおもちゃのように見える場合もあります。
海岸になじみがある人は、おそらく岸に打ち上げられたカツオノエボシを見たことがある場合が多いと思います。

水面下に伸びる触手は、非常に長く平均10メートル、最大で50メートル程度まで達する場合もあるそうです。
そして、その長い触手には毒を持つ刺胞があり、これを使って獲物を捕らえる際には、麻痺させる力を持っています。

なお、カツオノエボシ自体を捕食する天敵は、ほとんどいません。
加熱すると毒が不活性化されるため、人間が食べることはできるようですが、刺される危険を冒してまで食用として利用する価値は無いようです。

 

遭遇する地域や環境

カツオノエボシは、海域に広く生息しています。
暖流にのって南方から移動してくるため、日本国内では主に太平洋沿岸でよく発見され、九州南部から関東地方で特に多く報告されています。
カツオノエボシが生息している可能性がある地域、特に太平洋沿岸の海域では、どこでも遭遇する可能性があります。

## 遭遇する時期や時間帯
カツオノエボシは、主に夏季に日本付近に現れます。
本州などで発見されるのは、初夏(5月くらい)から9月くらいまでです。
沖縄県の場合、秋でも見られることがあるようです。

カツオノエボシは、漂流しているだけで、泳ぐことができません。
そのため、遭遇する時間帯は、潮流や風などの自然条件により変わります。

また、時にカツオノエボシが大量発生することもあり、海水浴場に多くの個体が出現したり、海岸に多数打ち上げられる場合があります。

 

カツオノエボシの危険性

カツオノエボシの危険性は「触手に触れること」です。
触手の表面には「刺胞」という組織が分布しており、獲物などが接触すると小さな毒針が発射される仕組みになっています。

毒針に刺されると、強い痛みが走ります。
その痛みは電気ショックを受けたような衝撃で、カツオノエボシには「電気クラゲ」という俗称もある程です。
さらに、刺されるのが2度目だと、アナフィラキシーショックの可能性があり、意識を失ったり、死亡する可能性もあります。

自身で触手を動かして攻撃してくることはありませんが、触手が非常に長いため「気付かないうちに、カツオノエボシの触手の近くを泳いでいた」ということが起こる可能性があります。
海上で突然激しい痛みを感じパニックになると大変危険です。

また、「岸に打ち上げられて乾燥した個体」でも、触手に触れると毒針を発射される可能性があります。
打ち上げられた個体は、浮き袋が青いプラスチックのおもちゃのような見た目になります。
子どもが磯遊びをしている時に、たまたま見つけて興味本位で触ってしまった場合などに毒の被害を受ける恐れがあります。

 

危険にさらされたときの対処法

カツオノエボシの触手に触れてしまった場合、すぐに激しい痛みが走ります。
強烈な電気ショックを浴びたような通常のケガとは異なる症状が現れます。

直ぐに、以下のような対処を行いましょう。
– 海上で刺された場合は急いで岸に戻る。
– 「海水」をかけて、触手を洗い落とす。素手で触らないこと。
– 毒を無力化するため、患部をしばらく温める(40~45℃が目安)。※数分程度で良いと考えられます。
– その後は、氷や冷水で冷やす。
– 急いで病院に向かう。

激しい痛みで驚くかもしれませんが、冷静に触手を取り除き冷やすなどの処置を行い、病院に行くことが大切です。
思わず手でこすったりしてしまうと、毒針が深く入り込む可能性があり、逆効果です。
また、真水で洗い流すと、毒が体内に入りやすくなるため、注意しましょう。
なお、一部のクラゲでは、刺されたときに酢を掛けることが推奨される場合がありますが、カツオノエボシでは酢の刺激に反応し、毒針が発射されてしまいますので厳禁です。

 

危険を防ぐための対策

カツオノエボシの危険を防ぐための最も効果的な対策は「直接触れないこと」です。

ただし、海上のカツオノエボシは、その体色のため事前に発見するのは難しいです。
また、人間を避けるといった行動もとらないため、追い払うことはできません。
さらに、近くに漂うカツオノエボシを見つけても、海中では動きが制限されるため、とっさに避けることも難しいです。
そのため、カツオノエボシに直接触れないためには、遭遇する確率を減らすことが大切です。

以下のような対策が有効です。
– 海に入る場合には、「カツオノエボシの発生情報」を確認しましょう。
– 海水浴場では、「クラゲ防止ネット」を設置している場所を選びましょう。
– ダイビングなどを行う場合は、ウェットスーツやラッシュガード、長袖Tシャツやスパッツなどを着用して、できるだけ肌が露出しないようにします。
– 毒の被害にあった場合に、冷静に対処できるよう、一人で行動しないことも大切です。1人でいるときに痛みでうまく行動できなかったり、パニックになってしまうと大変危険です。
– 岸に打ち上げられている個体を見つけても、直接触ってはいけません。

 

まとめ

本記事では、カツオノエボシについてその危険性や、危険を防ぐための対策などをまとめました。
説明した内容をまとめると以下の通りです。
– 海面を漂っているクラゲのような生物
– 触手に毒を持っており触れると激痛が走る
– 岸に打ち上げられた個体であっても触手に触れると危険
– 刺された場合は、「海水」で触手を洗い落とし、病院で診察すること

海面に見える部分は10cm程度とそこまで大きくないですが、触手は数十メートルに達することがあります。
その触手に触れると、強い電気ショックを受けたような激痛が走ります。
海岸に打ち上げられていることも多く、青色のプラスチックのおもちゃのように見えることもあります。
しかし、興味本位で触れることは、絶対にやめましょう。
もし、カツオノエボシに触れた場合の対処法は「海水で触手をはがし、病院を受診すること」です。

 

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この記事を書いた人

【プロフェッショナル】(生物・環境)
生物系大学院卒業後、自然環境系の建設コンサルタントに従事。
地理情報、自然環境や生物の生態等を専門とするほか、環境アセスメント図書作成の経験も有する生物環境分野の専門家。
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