ハイイロゴケグモに毒性はある?嚙まれた場合の危険性と対処法について
ハイイロゴケグモは、特徴的な見た目をしている小型のクモです。
もともと日本には生息していなかった種ですが、数十年前に国内で発見されて以降、各地で発見されています。
ベンチの下や自販機と壁の隙間など、人工的な環境にも巣を作る傾向があります。
そのため、日常生活で不意に出会う可能性もある生物です。
毒を持っており、噛まれると激しく痛んだり、腫れなどの症状が現れる場合があります。
そこでこの記事では、ハイイロゴケグモについて、その危険性や、危険にあった時の対処法、危険を防ぐための対策などを紹介します。
この記事を執筆した専門家
生物系大学院卒業後、自然環境系の建設コンサルタントに従事。
地理情報、自然環境や生物の生態等を専門とするほか、環境アセスメント図書作成の経験も有する生物環境分野の専門家。
ハイイロゴケグモの基本情報
ハイイロゴケグモは、毒を持つクモ(蜘蛛)の一種です。
体長はメスが1.5cm前後、オスはそれより小さく数mm程度と比較的小型のクモです。
メスは背中に赤い模様を持つのが特徴です。
しかし、変異があり、模様がハッキリしない場合や、模様がほとんど無く全体が灰色や黒色の場合もあります。
オスは灰色で白や黒の斑紋が並んでいるような地味な見た目をしています。
動きは、比較的ゆっくりとしています。
一般的なクモと同じく巣を作り獲物を待つ習性があるため、地面を素早く動き回るようなことは基本的になく、作った巣でじっとしていることが多いようです。
食性も一般的なクモと同じく肉食性で、主に昆虫類を捕食します。
獲物が網に触れると素早く捕まえ、噛みつき毒を注入し、麻痺させてから食べます。
遭遇する地域や環境
ハイイロゴケグモの本来の生息地は、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、南アフリカなどだと考えられています。
しかし、現在では、アジアや中東など世界中に分布が広がっています。
日本でも数十年前までは生息していませんでしたが、現在では複数の都道府県で定着しています。
輸入資材等に紛れて日本に侵入してきたと考えられています。
日本国内では、徐々に侵入地域が広がっており、2023年の時点では、全国の17都道府県で発見されています。
生息環境は比較的広く、人工的な環境も含めて様々な環境に適用しています。
先ほど説明した通り、地面を動き回るのではなく巣を作りじっとしています。
巣は、日当たりが良く温かい隙間などを好むようです。
さらに、餌となる小さな昆虫が多い環境であることも重要です。
例えば、「ブロックやベンチの下や隙間」、「エアコンの室外機や自動販売機の下や隙間」、「外に置いている靴の中」など、さまざまな環境でハイイロゴケグモの巣を作る可能性があります。
なお、ハイイロゴケグモの巣は、木の枝や天井等でよく見るタイプの規則的なパターンからなるクモの巣ではありません。
不規則な形状の巣で、糸がごちゃごちゃと密集しているようなイメージです。
遭遇する時期や時間帯
ハイイロゴケグモは夜行性で、夜間に活動します。
ただし、巣の中に潜んでいることが多く、活発に動き回るような行動は基本的に捕りません。
春から秋の暖かい時期に活発に活動します。
冬季には活動が少なくなりますが、温かい地域や室内であれば、他の季節と変わらない活動をします。
ハイイロゴケグモの危険性
ハイイロゴケグモの危険性は「噛みつかれること」です。
毒を持っており、噛みつくと毒を注入してきます。
なお、毒を持っているのはメスのみです。
メスは、背面に特徴的な赤い模様が入っていることが多いです。
ただし、変異が大きく模様がほとんど見えない個体もいるため、見た目だけで判断するのは注意が必要です。
噛まれた場合、痛みを感じます。
同じヒメグモ科の毒グモであるセアカゴケグモと比べると毒は弱いと考えられています。
噛まれた部位の痛みや腫れが発生し、場合によっては、発熱や寒気、吐き気を感じたり、筋肉痛が発生することもあるようです。
これらの症状は数日で治まるのが一般的です。
健康な成人の場合、命に係わるような重篤な症状が発生することはほとんど無いようですが、小児、高齢者、虚弱体質の人にとっては、重篤な症状が発生する可能性があります。
また、海外も含めて、確認できる範囲では死亡事例が報告されていません。
このように噛まれると毒による被害を受ける危険性がありますが、攻撃的でなくおとなしい性格であるため、積極的に噛み付いてくるようなことはありません。
しかし、人工的な環境に巣を作ることが多いです。
そのため、たまたま手をついたところにクモの巣があり、不意に素手で触ってしまった場合などに噛まれる恐れがあります。
危険にさらされたときの対処法
ハイイロゴケグモに噛まれた場合には、毒により痛みを感じ、場合によっては赤く腫れあがります。
ただの切傷と違い、毒による症状であるため、対処法には注意が必要です。
直ぐに、以下のような対処を行いましょう。
– 噛まれた場所をきれいな水や温水で良く洗う。
– 可能であれば石鹸水で洗浄したり、消毒しましょう。
– 洗浄後は、患部周辺を冷やします。
嚙まれた場合には、まずこのような処置を行うことが望ましいです。
また、症状にかかわらず、できるだけ早く病院で診察を受けることが推奨されています。
特に発汗や発熱などの症状が発生している場合には、速やかに病院に行くべきです。
その際には、可能であれば、噛まれたクモを殺し、袋などに入れて病院に持っていくと、診断がスムーズになります
他にも、「アナフィラキシー・ショック」に注意が必要です。
上で説明したとおり、ハイイロゴケグモの毒は、人間にとっては命にかかわるほどの強い毒ではありません。
しかし、可能性は低いですが、まれにアナフィラキシー・ショックという急性のアレルギー反応が起こることも想定されます。
アナフィラキシー・ショックになると、激しい蕁麻疹や、血圧の低下、失神などの重い症状が現れ、命にかかわる場合があります。
もし、このような症状が発生した場合は、救急車を呼び医療機関で対処してもらう必要があります。
危険を防ぐための対策
ハイイロゴケグモの危険を防ぐための最も効果的な対策は「素手で触らないこと」です。
ハイイロゴケグモは人工的な環境にも生息していることが多いです。
そのため、日常生活で出会う可能性もあります。
例えば、「公園のベンチに座っていたら手をついたところにハイイロゴケグモの巣があった」ということがあり得ます。
ハイイロゴケグモが侵入している地域では特に注意が必要です。
侵入している地域の場合、例えば「ハイイロゴケグモ 東京都」などとネットで検索すると、その自治体の情報を公開するページを発見できると思います。
ハイイロゴケグモの確認例が多くないこともあり、セアカゴケグモよりも情報量は少ないですが、その地域での確認状況などを知ることができる可能性があります。
自分が生活している地域でハイイロゴケグモの生息情報があった場合には、ハイイロゴケグモが生息してそうなところで作業する時には、素手で行わない方が安心です。
国内におけるハイイロゴケグモの確認状況
ハイイロゴケグモは、1995年に横浜市本牧ふ頭市で初めて発見され、その後、徐々に分布地域を拡大しています。
そして、2023年現在では、確認出来た範囲では、以下の17都府県でハイイロゴケグモの発見報告がなされています。
「東京都、神奈川県、山梨県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、山口県、愛媛県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県」で発見記録あり。
少しニュースを検索してみると、最近のハイイロゴケグモ確認を伝えるニュースが以下のように見つかりました。
ニュース日付:確認自治体
2022年9月28日:神奈川県相模原市
2022年10月1日:熊本県熊本市
2022年10月18日:大分県杵築市
2022年12月3日:山梨県富士吉田市
2023年5月13日:鹿児島県志布志市
自動車や船舶などに巣を作る習性があるため、交通機関等によって、今後も分布が広がっていくことが考えられます。
まとめ
本記事では、ハイイロゴケグモについて、その危険性や、危険を防ぐための対策などをまとめました。
説明した内容をまとめると以下の通りです。
– ハイイロゴケグモは、毒を持つ小型のクモ
– 特徴的な赤い模様を持つことが多い
– 自販機の隙間やベンチの下など、人工的な環境にも巣を作る
– 嚙まれると痛みを感じ、まれに全身に広がる場合がある
– ただし、積極的に攻撃されることは無い
ハイイロゴケグモは、毒を持っており、噛まれると痛みや腫れなどの症状が出て危険です。
素手で触れることは絶対にやめましょう。
もし、ハイイロゴケグモに噛まれた場合の対処法は「水で洗浄・消毒し、病院を受診すること」です。