5Gと電波の人体への危険性について【医師執筆】

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目次

5Gは人体に影響が出る?5Gと電波の人体への危険性について

近年ますます加速するデジタル社会。インターネットから始まり、画像や動画など、大量の情報が行きかうのが「当たり前」になってきています。

その中で、注目を集めている最新技術の1つが「5G」です。今は実用化され、スマートフォン始め、多くの通信技術が「5G」によって支えられ始めてきています。

しかし、名前だけ知っていても「5Gとは何か」いまいちピンと来ない方も多いのではないでしょうか。今回、5Gとは何か、そして5Gの人体への影響について分かりやすく解説していきます。

 

この記事を執筆した専門家

sougouishi【プロフェッショナル】

医師。プライマリ・ケア認定医、外科専門医、病院総合医療認定医。
現在、内科・外科・皮膚科医として勤務する医学分野の専門家。

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電波と電磁波とは?

5Gについて説明する前に、前提知識として「電波と電磁波」についてお話しします。

よく電波と電磁波は混同して考えられがちですが、2つは似ているようで異なります。

まず、電波とは「電界と磁界が互いに影響し合いながら空間を光と同じ速さで伝わっていく波」のこと。電界はプラスとマイナスの極性がある世界で、磁界はN極とS極
がある世界。まったく異なる2つの世界ですが、両者は非常に密接にリンクしています。

簡単にいうと、磁石に鉄の棒をこすり合わせるだけで電界の元である「電気」は発生しますし、現にその原理を応用してタービンを回し発電されています。

そして、「電磁波」と一言でいっても色々な種類があります。例えば
• レントゲン撮影などに用いられるエックス線などの「放射線」
• 太陽光線や赤外線などの「光」
• テレビ・ラジオ・携帯電話等に利用されている「電波」
• 電力設備等から発生する「電磁界」そのもの
を全てひっくるめた概念。それが電磁波です。

その中で電波とは、「空間を伝わる電気エネルギーの波」のことだけを指します。この波を電波では周波数といいます。電波の大きさ(単位)は周波数で表し、1秒間に繰り返される波の数をヘルツ(Hz)という単位で表します。

電波は、空気のような媒体がなくても伝わることが一番の特徴です。物質のない理想的な空間では1秒間に約30万kmと、光と同じスピードで飛び回ります。

通り道に物質がある場合は、通り抜けたり反射したり、回り込んで伝わったり(回折)します。私たちが使っている携帯電話やテレビ、無線LANなどの「通信」も、こうした「電波」を通じて行われているのです。

ただし、携帯電話で使用している周波数の中で高い周波数(2GHz、1.7GHzなど)は、音の性質に似ています。5Gの場合は4Gよりも高周波となり、国内最高で28GHzと言われているものの、人体に影響を人体に影響することが知られているエックス線撮影では3000THz以上。
周波数だけで考えると「電波」は「放射線」と区別して考えた方がよさそうです。

図 周波数による電磁波の分類

総務省ホームページより引用( https://www.soumu.go.jp/main_content/000191698.pdf)

 

5Gとは?

では、5Gとは何のことを指すのでしょう。正式名称は「5th Generation」の略で、「第5世代移動通信システム」を短くしたものです。

これまでの4Gと大きく異なるのは「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」という3つの特徴です。

4Gと比べて通信速度は20倍、遅延は10分の1、同時接続台数は10倍の進化が見込まれ、さまざまなサービスやビジネスでの活用が期待されています。

通信がますます加速するということは、それほど多くの電波が利用されるということ。1つ1つの電波は放射線よりも健康被害が少ないものの、多くの電波が飛び交うとそれだけ多くの電波を人体が浴びることになり健康被害につながるかもしれません。

そこで、総務省はじめ、世界中の多くの研究機関で「5Gの健康への影響」の検証がなされてきました。

実際、5Gの営業許可証が発行された頃、中国では「5G基地局は密度が高く放射能も強いので、健康被害が生じる」といったデマが流れ、恐れられていたほどだったのです。

では、5Gを含めた「電磁波の人体への影響」はどれくらいだったのか。その科学的根拠を含めて、電磁波による人体への短期的影響と長期的影響についてみていきましょう。

 

5Gで人体に影響が出る可能性はあるのか?

まず結論からいうと「5Gにより人体に影響が出る可能性はないとは言い切れない」といえます。つまり「5Gによる健康被害はいまだグレーゾーン」ということですね。多くのことが言われていますが、2つの観点からお話していきます。

① 電磁波で起こりうる短期的影響:刺激作用と熱作用

まず、電磁波で起こりうる短期的な影響として「刺激作用」と「熱作用」があげられます。

刺激作用は、電波に当たって生じた誘導で電流によって、神経などがチクチクと刺激される作用です。熱作用は、電波が当たるとそのエネルギーの一部が体内に吸収されて温度が上昇する作用です。刺激作用は主に約10MHz以下の低周波で起こります。

② 電磁波で起こりうる長期的影響:発がん性

電磁波で長期的に起こりうる副作用として「発がん性」があげられます。

(1)グリオーマ

グリオーマとは脳の悪性腫瘍の1つであり、日本語名は「神経膠腫(しんけいこうしゅ)」。寿命としても5年生存率は50-70%という注意しなければいけない疾患の1つです。

電磁波と脳の悪性腫瘍。関係ないと思われていましたが、「電磁波でグリオーマのリスクが高まる」との論文がいくつか発表されました。

大規模な調査としては、2000-2004年に診断された2708人のグリオーマ患者と2972人の対照者についての調査報告がなされており、携帯電話を1640時間以上使用した群では、携帯電話を使用したことがない群に比べて、グリオーマの発生が1.40倍であり、特に1-4年の短期間に1640時間を越えた群ではグリオーマの発生が3.77倍であることが報告されました。

国立がん研究センターでは、「これらの通常の携帯電話による通話が悪性脳腫瘍であるグリオーマの発生につながるという十分な根拠はないが、携帯電話とグリオーマの発生について、今後も慎重に調査を進めていく必要がある」としています。

ただし、これらの調査が聞き取り調査であることから、各郡での思い出し方の差、などのバイアスがある可能性も指摘されています。

また、「電磁波でグリオーマが発生した」わけでなく「グリオーマ患者さんは長時間携帯電話を使っていた」というのが正しい表現。直接関連性が指摘されているわけではない点も注意が必要ですね。

(2)小児白血病

小児白血病のリスクに関して、0.4µT(マイクロステラ)を超える超低周波電磁波の暴露ありの群で、小児白血病が約2倍に増えると報告されました。

ただし、この報告も観察研究であり、因果関係を断定できるものではありません。居住環境における電磁界の長期間ばく露と小児白血病の発症増加との関連について、世界保健機関(WHO)は因果関係と見なせるほどには強くないと結論づけています。

また、仮に電磁界ばく露と小児白血病との間に因果関係があった場合でも、公衆衛生上の影響は小さいと述べています。

というわけで、電磁波による人体への影響は長期的にも短期的にも「可能性は残されている」ものの「直接関連しているデータはない」というのが実情です。

 

5Gを含めた電波に対する「ガイドライン」は?

このように、今だ「グレーゾーン」がある部分が残されている「電波」や「電磁波」。

特に5Gの促進により、非常に強い電磁界に人体がばく露された場合には、健康影響が生じる恐れがあります。

そのため、健康被害を未然に防ぐため「電波による健康被害を防ぐガイドライン」が策定されています。そこでは、電磁界の物理的性質や人体への作用についても、⻑年の研究から多くのデータが蓄積され、このような科学的知識を基に作られるようになりました。

最も広く利用されているのは、WHOが正式に認知している非政府機関である「国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドライン」です。

ここでは、電磁界ばく露によって生じるかも知れない健康影響について、 大規模な研究が実施されてきており、これまでのレビューでは、「ガイドラインで推奨されている限度値よりも低いばく露(0-300GHz)は健康への悪影響を何ら生じない」ということが示唆されています。

 

5Gの安全性に対する日本の見解は?

このような5Gを取り巻く現状について、日本ではどう評価されているのでしょうか。
総務省では「電波防護指針により守られており、熱作用により健康に悪影響が生じることはなく、またがんやその他の健康に対して悪影響を及ぼすとの根拠は見つかっていない」と評価しています。
また、電波の安全性を検証し、安心して電波を利用できるよう、電波の医学・生物学的影響に関する研究を、なんと平成9年度から実施しているのです。
これらの研究成果は、世界保健機関(WHO)が主導している国際電磁界プロジェクトにも含まれています。
このように、電波に関する研究は今もなお進んでいます。今後もますます加速する電波利用。またアップデートされたデータで行動指針が変わる可能性は十分ありますね。

 

ミニコラム:電磁波の医療機器への影響は?

電波と言えば、よく電車の優先席付近では携帯電話の使用について、注意喚起されていますね。なぜわざわざ携帯電話の使用が注意されているのでしょうか?

これは主に医療機器である心臓ペースメーカーへの影響が懸念されているからです。

ただし、ペースメーカーは電磁干渉により動作に異常をきたすおそれがありますが、本体から携帯電話を22cm以上離すことで問題はなくなります。したがって携帯電話はペースメーカーを植え込んだ部位とは反対側の耳で使用する場合には問題ありませんし、周囲の方も電車内では混雑時のみ携帯電話の電源オフが推奨されています。

なお、電磁調理器や電極を貼るタイプの治療器などは避けた方が良いとされます。

 

最後に

今回、5Gを含めた「電波」の人体への影響について解説していきました。

5Gや電波の長期的な人体への影響に関しては、情報が不十分なところもあります。ただし、「影響がない」ことを証明することは大変なことでもあります。

これまでの情報を踏まえて、過度に恐れずに便利な5Gスマートフォンなどを活用したいものですね。

 

参考文献・参考コンテンツ

・ 総務省ホームページ(https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/denpa/jintai/)

・ 電磁界情報センターホームページ
https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/denpa/jintai/)

・ 独立法人国立がん研究センターホームページ (https://www.ncc.go.jp/jp/topics/2011/20110628.pdf)

・ Ahlbom, A. et al., A pooled analysis of magnetic fields and childhood leukemia, Br J Cancer (2000)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10944614/

・ 公益社団法人 臨床心臓病学教育研究会ホームぺージ(https://www.jeccs.org/general/pacemaker/)

・ 東京大学医学部附属病院 脳神経外科「神経膠腫(グリオーマ)」
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/glioma/tumor/glioma.html

 

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